- 人間はありがたいものばかりを信じる -
談話室の扉を開ける。
窓からわずかに差し込む光に照らされ、舞ったほこりがきらきらと光った。
ダニエル曰く、談話室ということだったが、家財道具には埃よけの布がかけられていた。
かといって、要らないものを一切合切押し込んだ物置というわけでもなく、ただそこにあったキャビネットやテーブルに布をかぶせたという感じだ。
マシューが布をめくると、2つの円形のコーヒーテーブルが並べられている。
さらに自分が布をめくると重ねられた椅子が姿を現した。
「窓を開けよう。ほこりっぽい」
かるくせき込みながら、2人で窓を開けた。
この部屋は少し換気してほこりを払うだけで良さそうだ。
ひときわ背の高い家具から布を取ってみると、それが食器棚だということが分かった。ガラス扉を開き、ティーカップを手に取る。
「何それ」
「マイセン」
答えるとマシューがひゅうと口笛を吹く。
金色に縁どられ、細やかな花の模様が描かれたアンティークのティーカップは、この屋敷の華やかな時代の象徴だろう。今はもう、見る影もないが。
俺はそっとティーカップを棚に戻す。
「他にもお宝があるかな~?」
ふざけた口調のマシューがしゃがんで食器棚の下段の扉を開ける。
頭と手を突っ込んでごそごそと探っている彼から「ん?」という声が上がった。
マシューは古めかしい木箱を引っぱりだしてくる。
ふたを開けると、そこにはアルファベットと数字、YES・NOが描かれた板と、穴の開いたハート型の木片が入っていた。
「ウィジャボード……?」
「モーゼス、よく知ってんね」
「まあ……」
マシューは文字盤にかかったほこりにふーっと息を吹きかけ、手で払う。
「家の持ち主にオカルト趣味でもあったのかな」
「この屋敷、かなり古そうだし、19世紀から20世紀初頭にできてるならそうなのかも……」
「どうする?夕食のときにみんなでやってみる?」
「よせよ、うちのメンバーで『そういうの』信じるやつ誰もいねぇだろ」
彼はおもむろに文字盤をテーブルの上に載せ、プランシェットに手を添える。そしてちらりとこちらを見た。
マシューの手に重ねるように、プランシェットに手を置いた。まんまとのせられた気がして、なんか釈然としない。
「何か聞いておきたいことある?」
「え?うーん、突然言われるとなぁ……」
「だよなぁ、俺も」
ははは、と笑いながらプランシェットから手を離した。
「飯の準備しにいくか」
「うん」
軽食と夕飯のメニューについてあれこれ話すマシューと共に部屋を出る。
扉を閉める寸前にプランシェットが少し移動したのを、俺は見てしまったんだ。
