The travelers – Day.1

- 信じられないが本当だ -

昨晩、クリスマス・イブの夜、車に荷物を詰め込み出発し、今朝9時、目的地に到着した。

「うっわ、古そう……」

世間はクリスマス休暇。

華やかなイルミネーションに陽気な音楽、子供たちが色とりどりのおもちゃにはしゃぐ声をBGMに、恋人たちが所かまわずハグやキスをする(家でやれって話だ)。

もちろん、チーム「フォートレス」も世間に合わせてクリスマス休暇を取ることになった。皆で揃って仲良く旅行に来ている。

今回の滞在先は、よく言えば壮大な歴史の詰まった屋敷。悪く言えば、

「まるで幽霊屋敷《ホーンテッドマンション》だな」

車から降りて開口一番、ベルが容赦ない一言を吐き捨てた。

それもそのはず。

広大な前庭には枯葉が積もりっぱなし、小さな噴水も枯れ果て、敷地全体が蔦植物に覆われているが、今はその植物さえ黒く干からびている。外壁はひび割れ、ところどころ剥がれ落ち、温室だったであろうガラス張りのサンルームも、濁った泥水のような色に染まり、中の様子は窺い知れない。

生垣の木々にも緑の気配すらない、全体的に“死んだ屋敷”。

「おーい、早く入れよ」

屋敷の目の前で呆然とするメンバーたちをよそに、ダニエルはさっさと玄関の鍵を開けて中へ入っていった。

ジョンとジェーンも導かれるまま屋敷の中へ、ライオネルとベネットとマイカが談話しながらそれに続き、ジャグとサリーも屋敷の中へ入っていった。

「ベル、早く」

「一服してから」

モーゼスが声をかけると、ベルはひらひらと手を振って先に行けと促した。

一週間分の荷物を手に、俺とモーゼスは屋敷の中へ入る。

エントランスでメンバーがそれぞれざわついている。

あたりを見まわすと、ざわつく理由もわかった。

「こりゃまた……とんでもなく古いな」

ため息交じりのライオネルが頭を抱える。

燭台は蜘蛛の巣に覆われ、床には埃と、どこから入って来たのか枯葉も積もり、全体的に薄汚れていた。

組織管轄の屋敷だということだが、郊外の、何十年単位で使用していない屋敷のメンテナンスに回す金がないのだろう。

エントランスホール真正面、2階キャットウォークにつながる2本の流線形の階段。その中央にあるゴシック調の装飾を施された大時計も、ずうっと前に時を刻むのを止めてしまったようだ。

「ねー、今回の仕事って、まさか掃除じゃないよね」

「……」

ジャレッドの問いかけに、ダニエルは黙り込んだ。手にしているのは屋敷の見取り図らしい。

往路の車内で聞いていた仕事内容としては、組織が所有する郊外の屋敷の管理人が一週間ほど屋敷を離れることになったため、冬のバカンスがてら管理人代理としてチーム「フォートレス」が派遣されることになった、とのことだった。

「よーし、今回の部屋割りを発表する」

質問には答えずに、ダニエルはメンバーたちの方に向き直った。

「2階に客間が6つあるので、各自自由にペアを組んで使用すること。ただし、一番西の部屋は俺が使うからな」

「じゃあ、俺とジェーンはダニエルの部屋の隣」

即座にジョンが手を上げると、ダニエルも「ん、まあそうだな」と納得した。他のメンバーが納得しているかどうかは知らないが。

煙草を吸い終えたベルがようやく屋敷の中に入ってきたので、とりあえず全員で客間の部屋割りを決めることにした。

最終的な結論を図解すると、以下のようになった。

Bell & SallyMoses & MatthewBennett & Maika
hallway
DanielJohn & JaneJag & Rionel

「客室があるのはこっちの階段。東館の方だ。西館は昔ボヤが出て老朽化が進んでるから近づかないように」

言い終えると、ダニエルは客室へ荷物を運ぶよう、メンバーたちに促した。

「客室は綺麗だといいな」

「いや~、これは……どうだろうな……」

苦笑いを浮かべるモーゼスと談笑しながら階段を上がった先、客室に続く廊下にはこれまた豪華な装飾のフレームが取り付けられた姿見があった。

なんとなく、その姿見に目をやるとふわりとなびく黒いの髪の毛が映った。

驚いて立ち止まり、前を見る。

だが、そこには”いつものメンバー”たちしか歩いていない。

「マシュー、邪魔ー」

「あ、ああ、ごめん」

後ろを歩いていたジェーンにせっつかれ、再び歩き出す。

うちのチームにいる黒髪は、ライオネルとマイカの2人だけ。しかし、その2人の髪はなびくほど長くはない。

(気のせい……、か……?)

鏡に向けた背に、ぞわりと何かが這い上がるような気配がした。