- 目的地にたどり着けることは当たり前ではない -
「ジャグ、鍵!」
「え、い、今から開けるよ」
「あ?いいよ、俺一人で取ってくるから」
「…ああ、待って。こっちね」
意味不明な反応を返すジャグから車のキーを受け取る。心なしか腑に落ちないという表情をしていたので「どうしたんだよ?」と尋ねる。
「なあ、西館の3階に誰か上がってった?」
「いや?立ち入り禁止なんじゃねーの?」
「あ、そう。なんかさっき、人がいたような気がしたんだよね」
「双子が勝手に入ったとか?」
「あいつらがダニエルの言いつけ破ることなんてあったっけ?」
「そりゃ、まあ……」
無いか。
歯切れが悪いまま、ジャグは屋敷の中へ入っていった。
俺は車に積まれていた工具箱を持ち出し、玄関前に戻る。
先ほど、2階キャットウォーク部分の窓が一部破損しているのが見つかった。エントランスに降り積もった枯葉や砂埃はそこから入ってきたのだろう。一次的な応急手当に過ぎないが、養生しなければならない。
「……ベル、俺ちょっと屋敷の周り見て回ってくるわ。他にも窓割れてないか確認してくる」
「了解」
「これ適当なとこに置いといて」
ベルに工具箱を渡し、屋敷の外周を見て回ることにした。他にも割れてる窓があるかもしれない。西館の窓が割れてたら……それはまぁ無視するとして。
気持ち急ぎ目に、ジョギングよろしく走り出す。
サンルームのガラスもひび割れていたが、ここはドアで仕切られているのでノーカン。冷たい風が吹き込むことはないだろう。
3階の窓は開けられている。ダニエルかマシューあたりが開けたんだろう。東館の窓は特に損傷は見られない。
しばらく走って、屋敷の裏庭に回ると石畳が敷かれていた。
丸いアイアンテーブルといくつかの椅子が屋敷の壁側に避けられている。石畳の道を辿ると、少し離れた場所にガゼボもあり、ここで優雅にティーパーティなんか開けそうだ。
ただ、石畳の道はガゼボの先にも続いていた。
その先はもう草木が生い茂っている森の中。
見回りの趣旨からは外れるので、俺は再び走り出した。
西館は東館より荒れ方が酷かった。ダニエルが言ってたボヤの跡だろうか。2階端の窓がいくつか割れていて、壁にすすがついている。
時間にして5分程度で屋敷を一周し終え、玄関へと戻る。ちょうどベルが煙草をポケット灰皿に押し付けているところだった。
「……どうだった?」
「んー、西館以外は特に……。とりあえずエントランスの2階の窓だけ修理で良さそうだわ」
「そう」
結局、工具箱は自分で運び入れ窓を修理する次第になった。
