The travelers – Day.3

- 無知は幸せだと誰かが言った -

朝食を簡単に済ませ、俺とベネット、マイカ、ジェーン、ジョンで、家から十五分ほど歩いたところにある山中を流れる川にやってきた。そんなに大きな川ではないが、涼やかですごく心地良い場所だ。

「知ってる?この川、ここらへんで売ってるミネラルウォーターの源流なんだって」

「んだよ。じゃあミネラルウォーター買う必要なかったじゃん」

「いや、運ぶの大変だし、生水は腹壊すって」

自前の釣り竿を用意しながら、ベネットは顔をしかめた。マイカは浅いところに石で囲いを作り、小魚を追いやる用の仕掛けを作った。

ジェーンとジョンと俺は、釣りをする二人の少し下流の浅瀬で遊ぶことにした。

「つめてー!」

「きゃー!」

怪我は厳禁とダニエルに言いつけられたため、皆スニーカーのまま川に入る。ばしゃばしゃと水を掛け合ったり、手で捕まえられそうな小さな魚をすくっては放したりしていた。

ベネットがこちらにまで響く大声で「ヒット!」と叫んだ。

「今日は魚料理かな」

「何が釣れるんだろう?」

「さぁ、今のシーズンならカワマスとかじゃないの」

「俺、フライがいいな〜」

そんなことを話していると、マイカが俺たち三人に向かって「もうちょっと上流行くぞ」と声をかけてきた。川から上がって、上流に向かう釣り竿を追った。濡れた靴のせいで多少歩きづらい。やがて、滝というほどではないが、少し大きめの段差がある場所に着いた。ここにポイントを定めるようだ。

「ジェーンもやってみる?」

「うん?」

ジェーンはするりとジョンの横をすり抜け、マイカの腕の中に収まっていった。ちらりとジョンの表情を確認したが、特に不機嫌そうというわけでもなく「水鉄砲とか持ってくりゃよかったなー」とか言っていた。

なんとなくホッとして、ベネットの傍らにあるバケツに歩み寄って、中を覗き込んだ。

「ベネット、今んとこ何匹?」

神妙な顔でVサインを作るベネットに、マイカが思わず噴き出した。

「少なっ!」

「うるせー!釣れねぇから場所変えたんだろうが!」

「腕が悪いんじゃなくて?」

ジョンがにやりと笑うと、ベネットは「ぜってー人数分釣るから!」と言いながらルアーを投げた。人数分ってあと十匹くらい欲しいぜ。

手持ち無沙汰になったので、再び川の中に入る。太陽に反射して、川底がきらりと光った。なんだろうと思って近付き、金色に光るそれを拾い上げる。

「……」

手のひらに収まる、筒状の人工物。

「……マイカ、薬莢見つけた」

「あ?」

拾い上げたものをマイカに見せる。マイカはジェーンを支えていた腕を放し、薬莢を受け取った。

「20ゲージか。狩猟用だろ。鳥とかウサギとか撃つ用のやつだよ」

「んだよ、ビビったぁ」

「まあ、それを人間に向けて撃ってない可能性はないけど」

「いつのか分かる?」

「さすがにいつのかは……」

マイカが目を細めて、

「ぅわっ…!」

薬莢に刻まれている文字を確認しようとしたとき、

「あぶねぇッ!」

運悪く、その日一番の大物がヒットした釣り竿に引っ張られたジェーンがバランスを崩すのと、ジョンが叫ぶのがほぼ同時だった。ジェーンを庇うようにして、一緒に川に倒れ込んだジョンの左腕は、川底の尖った石によってぱっくりと割られた。