– 嘘みたいだと思うんなら、実際にその目で見てごらんよ –
「……うん、そう。……こっちは大丈夫。……そうか、わかった。え?……心配ない。レオンも気を付けておいで」
廊下に備え付けられたダイヤル回転式の電話機は、受話器をおろすとチン、と軽快な鈴の音がした。
ふぅ、と一息ついてから振り返ると、そこにはダニエルが立っていた。
「レオン、もうこっちに向かってるって?」
「ああ、今空港に着いたところだって」
一人遅れてやってくるライオネルも、明日の昼にはこちらに到着する予定らしい。
「ライナスは?」
「本部」
「あ、そう」
アナログよりもデジタルを、ネジと歯車よりも演算プログラムを、自然よりもメカニックを好む我がチームのエンジニアは、兄弟の説得にも応じることなく、組織の本部でアルバイトをしながら夏を過ごすことを選んだ。
そこでしか会えない友達もいるようだし、何より本人がそこで過ごしたいと言うのなら、私たちが何を言う必要もない。少々足りないところはあるが、自分の責任は自分で取れるように育てている。
「今夜はチーズとハムとソーセージとビールでパーティだぜ」
「“カルテス・エッセン(冷たい食事)”ってやつか」
せっかくドイツにやってきたのだからと、マシューが色々とリサーチしているらしい。
ドイツ人というのは基本的に食事に対する興味がないため、火を通さなくても食べられる簡素な食べ物が多い。
バカンス中はその文化に倣うか……しかし、凝り性の料理長のことだ。目の前に食材があるなら調理せずにはいられないだろう。むしろいつまで料理をせずに耐えられるのかが見物だ。
「それはそうと、さっき良いモノ見つけたんだ」
「なに?」
「後で見せてやるよ。きっと驚くぜ」
「変なモノじゃないだろうな?」
「クライアントのお目当てのモンだよ」
「……」
「ほら、そんな顔してないで笑えよ。……
俺たちは“仕事中”だろ?」
