– 額面通りに言葉を受け取る技術というものがあるらしい –
太陽が地平線に触れる頃、
俺から言わせれば、この2人の雰囲気はいつだって一触即発だ。
ソファーベッドで休むジョンが、身体を起こした。マイカはその隣に腰掛ける。
「ジョン、大丈夫か?悪かったな」
「平気へいき。血も止まったし、もともとそんな大した怪我じゃねーよ。ベネットも運んでくれてありがとな」
「気にすんなって。大したことねぇならよかったよ」
ジェーンは、今は一階に下りている。
この2人の一触即発状態の原因は大体がジェーンだ。あいつがいなかったら、ほら、こんなに普通じゃねぇか。
なんともやりきれない微妙な気持ちで2人を見つめた。
「そういえば、ダニエルが明日は街で買い出しするってよ。お前、何か欲しいもんある?」
「そうだなぁ。今のところは……替えのガーゼと包帯くらいでいいや。さっき救急箱の中身少なそうだったしな」
「OK.」
マイカは取り出したスマホのリマインダーにメモをする。ジョンは他にも何か必要があったか考えているようだ。
「明日の買い出しって誰が行くんだよ。全員ってわけじゃねーだろ?」
「少なくともお前は留守番だよ、けが人だしな」
「だよなぁ」
ジョンは困ったように腕を上げたり下げたり、回してみたりしている。まぁ、留守番と言われて困るのもわかる。この土地にはほぼ何も無いのだ。かろうじて、持ってきたポケットWi-Fiのおかげでスマホが外界と繋がっているくらいで。
「あ、あと俺も留守番だわ、多分」
「え?ベネットも?なんでだよ」
「ダニエルに怒られたんだよ。川釣りに出てくとき“怪我すんな”って言われてたろ?」
つまり、言い出しっぺの俺が責任者ということで、けが人を出してしまったつけを払わねばならない羽目になっていたのだ。その説教には、ご丁寧にリーダー直々のチョップまで添えられた。
「“リーダーチョップ”とか言ってよぉ」
「あいつのネーミングセンス、ほんとクソだな」
「おい、腐ってもリーダーだぜ!?」
「腐ってもって!」
3人でひとしきり笑ったあと、ジョンが思い出したというようにぽん、と手を叩いた。
「ああ、あとアレ買ってきてよ。チョコレート」
「チョコレートぉ?どれだよ」
「ピンクの包み紙で、ラム酒が入ったやつ」
「ああ、」
あれね、とマイカがリマインダーにメモする。
チョコレートは大量に買い込まれていたが、たしかにあれは美味かった。少し甘苦いチョコレートと、ラム酒の酸味が絶妙な一品だった。酒が進むチョコレートだと思う。あの味を思い出しただけで……
「なんか適当に酒買ってきて」
「俺に言わなくても誰かが買ってくるだろ、多分」
何故か俺の提案はリマインダーに記載されないまま、1階にいるジャグから夕飯のコールがかかった。
何が良いとか、何が悪いとかではないが、俺は険悪な雰囲気は苦手なので、これくらいの空気感が続けばいいなと思った。
明日、旅行日程は折り返し地点に到達する。
