– アルファ部隊は全員、ドイツ語が堪能 –
リマインダー。
ベルの欄には、『ライターオイル』『フェーダーヴァイザー』『煙草』……昨日言ってた通りだ。
ライオネルの欄には、『煙草』『部屋干し用洗剤』……主夫かよ。まあ、気持ちは分かる。
ジョンの欄には、『ガーゼ』『包帯』『ラム酒のチョコレート』……ラム酒のチョコレートはブラヴォー部隊が買ってくるように打ち合わせ済みだ。
ジェーンの欄には、特に何もなし。
ベネットの欄には、『煙草』『キルシュヴァッサー』……甘い酒を欲しがるなんて珍しい。
マイカの欄には、『煙草』『虫さされ用の薬』……救急箱の中にありそうなものだが、見つからなかったのだろう。
ジャグの欄には、『おいしい酒』……抽象的すぎんだろ。
サリーの欄には、『煙草』『トイレットペーパー』……まあ、トイレも10人以上で使ってるからな。
「っつーか、煙草多すぎだし、全員銘柄書いてねぇし」
「俺、皆の銘柄覚えてるよ」
「マジか、流石だな。じゃあモーゼスは煙草頼むわ」
「うん」
「買うならカートンで買ってやれよ。切らすとうるさそうだからな。ちなみに俺はラッキーストライクの11mgのやつな」
「ええ、ダニーは自分で買えよ……」
俺たちはブラヴォー部隊とは分かれて、そこそこ大きい商業施設がある街まで行く。この程度の日用品なら、街に下るだけでも揃えられそうなもんだが、ダニエルが買いたい酒が街に無かったらしい。あと、フェーダーヴァイザーもあるかどうか危ういので、大きなマーケットまで足を伸ばすことにした。
アウトバーン使って、片道1時間半。速攻で買い物終わらせても昼を過ぎる。まあ、昨日作ったフォレレ・ブラウもまだ残っているし、ブラヴォー部隊は俺たちよりも先に帰るだろう。
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わらわらと人が集まる、ショッピングモールのエントランス。
特に問題なく買い物を終えた俺は、集合場所に指定されたそこに10分も早く来てしまった。が、モーゼスの買い物はそれよりも早く終わっていたらしい(まあ煙草だけだしな……)。カートンが詰め込まれた紙袋を下げたモーゼスがぼーっとしながら壁にもたれていた。
「よぉ、モーゼス。早かったな」
「あれ?ダニエルは?」
「酒は全部ダニーに任せた。でも、そのうち来るだろ」
そうこう言っているうちに、紙袋を2つ手に提げたダニエルが集合場所に現れた。
左手の紙袋は、よくある厚手のクラフト紙でできたものだったが、右手に持っている袋は、マットな質感に加工された黒に近い藍色の紙袋。ご丁寧に箔押しで豪奢なロゴマークが入っている。
「欲しかった酒って、結局なんだったんだよ」
「シュペートブルグンダーの赤ワイン」
「……なるほど、ラインガウね」
俺とモーゼスが紙袋を覗き込むと、これまた高そうな箱が入っていた。
ヘッセン州のライン川、その丘陵地・ラインガウで栽培されるブドウによって作られる、高級ワイン。ドイツの国産ワイン自体、白ワインが有名で、ラインガウでも最高級品種の白ブドウ『リースリング』が栽培されている。“ドイツで最も華やかで偉大なワイン”と言わしめるラインガウのワインの中、唯一の赤ワインが『シュペートブルグンダー』というわけだ。
「というわけで、これは自分へのお土産」
「いや、皆に提供しろよ。俺も飲みたい」
「つーか、フェーダーヴァイザーはともかくとして、キルシュヴァッサー安いやつ買ってきたんじゃね?地元でも見るやつだよ、これ」
そんな会話をしながら荷物を車に積んで、帰路につくことにした。
