– 非日常に生きる –
ベネットのリクエストはフォレレ・ブラウだったが、マシューは釣果の魚たち(ほとんど私が釣った)をすべからくフライにした。一昨日とは打って変わって大漁だったので、みんなで捌くのを手伝った。
「明日、お前らに良い酒飲ませてやるよ」
ダイニングテーブルは狭くて全員座ることができないので、リビングで食事をとっていた。
そんな折、ダニエルが口の端についたタルタルソースを拭いながら、メンバーたちにそんなことを言った。
「ラインガウ?自分のお土産にするんじゃなかったの?」
樽の残りも少なくなったビールを煽りながら、機嫌の良さそうなマシューがダニエルに聞き返す。
「お前が提供しろっつってたんだろ。しょうがねぇから皆に飲ませてやるよ!」
「とか言って、持ち帰るの面倒になったんだろ」
ライオネルが呆れたような視線を向けると、ダニエルは「バレたか」と笑った。
「食材も片付けなくちゃなぁ。まだベーコンとかそこそこ残って……」
「任せて!」
マシューが言い切る前に、ジャグが身を乗り出した。その口からテーブルに少し飛んだ食べカスを、モーゼスが嫌そうな顔でふき取る。
ベネットが、傍らにあったまだ中身の残っているキルシュヴァッサーのビンをぽんぽんと叩いた。
「んじゃ明日は昼間っつか朝から飲もうぜ。最終日だしパーッとな」
「いいねぇ」
「じゃあ、私のフェーダーヴァイザーも提供するか」
「よっ!ベル、太っ腹!あ、腹がたるんでるとかそういう意味じゃなくて」
「一言多いんだよ、お前は!」
囃し立てるダニエルに、ベルの惜しみない一撃が振り下ろされた。
「最終日に向けて、胃を休めたいな……」
「じゃあ夕飯はツヴィーベルズッペにしてやるよ」
「何それ?」
「オニオンスープ」
「ならそう言えよ」
ジョンとマシューのやり取りに、ベネットがちゃちゃを入れる。
5日目は、驚くほど穏やかに時間が過ぎていった。
BGMに有名映画のDVDが流され、TRPGをやる連中、トランプに興じる連中、古びた本や雑誌をめくる連中。
夕食と、最終日のための料理の仕込みをするためマシューとキッチンに立った。
「マシューは満足?」
「なにが?」
「料理がたくさんできて」
「そりゃもちろん」
おおよそ、世間と隔絶された世界に生きているとは思えなかった。
